ベンラファキシン


海外では比較的簡単に手に入る抗うつ剤「ベンラファキシン」。日本でも2015年から販売が開始されました。
ベンラファキシンはSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と称されるタイプの薬です。主にセロトニンに働きかけつつ、ノルアドレナリンの増加も図ります。

うつ状態を改善する薬として有名ですが、どのような薬なのでしょうか。以下ではベンラファキシンについて詳しく紹介していきます。

 

 

ベンラファキシンとは?

ベンラファキシンは日本で3番目に発売された抗うつ剤で、セロトニンとノルアドレナリンを増やす効果があります。不安や落ち込みを改善できるため、うつ病患者に処方されることが多い薬剤です。
日本では新薬として登場しているベンラファキシンですが、海外では既にジェネリック薬品も登場しているほど、使用され初めてから時間が経っています。

また、ノルアドレナリンを増やして意欲を高める効果があることから、うつ病以外にもさまざまな心の不具合を訴える患者に処方されています。

ベンラファキシンの効果

うつ状態の改善

セロトニンとノルアドレナリンに作用し、両方の神経伝達物質の量を増加させるベンラファキシン。その作用が働く割合はセロトニンとノルアドレナリンそれぞれに対して30:1程度で、セロトニン有利であるとされています。
セロトニンを中心として効果を発揮し、薬の服用量を増やすことでノルアドレナリンへの効果も強くできる薬です。この効能から、うつ状態で不安や落ち込みに悩んでいる方や、意欲の低下も伴っている場合に処方されます。

うつ病だけでなく、セロトニンが症状に関与する様々な種類の不安障害に処方されるのもベンラファキシンの特徴。注意欠落障害(SDHD)の治療にも効果があるとされています。

更年期障害の改善

ベンラファキシンは女性の更年期障害を改善するとの効果も報告されています。女性ホルモンや自律神経の乱れに起因する、寝汗やほてりなどに効果を発揮。しかし、日本で認められているのはうつ病患者への使用のみであり、更年期障害に悩んでいる方には今後保険適用外の使用という形式で導入されていくことになる見込みです。

慢性疼痛を訴える患者に対しても同様。ベンラファキシンは線維筋痛症にも適応が認められるほど、痛みに対して効用があることが報告されていますが、鎮痛薬として気軽に使用するにはまだまだ時間がかかるでしょう。

ベンラファキシンの作用機序

セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害

神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、脳内の神経間における双方の濃度を高める働きがあるベンラファキシン。このことから、「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」と称され、略して「SNRI」とも呼ばれます。セロトニンは不安を和らげる効果、ノルアドレナリンは意欲を高める効果がある神経伝達物質です。

ベンラファキシンはセロトニントランスポーターとノルアドレナリントランスポーターとのみ結合し、他の受容体には影響を与えないため、副作用が少ないという特徴があります。セロトニントランスポーター・ノルアドレナリントランスポーターはそれぞれセロトニンとノルアドレナリンを再吸収する、神経終末の分子です。

オピオイド受容体に働きかけ疼痛閾値を上げる

ベンラファキシンの働きは、気分を司る神経伝達物質の再取り込みを阻害するだけではありません。間接的にオピオイド受容体やα1アドレナリン受容体に作用を及ぼし、疼痛閾値(痛みを感じる最低限の刺激の値)を引き上げる作用もあることが分っています。

マウスへの実験では、鎮痛のために麻薬を必要とするような重度のうつ病患者にもベンラファキシンが有効に作用する可能性を示唆する結果が出ました。

ベンラファキシンの副作用

自殺企図のリスク

アメリカでは若年成人未満への投与が禁止されているベンラファキシン。FDAが行った臨床試験では、25歳未満の服用患者の自殺行動のリスクが5倍になったという結果が出ました。ところが、他の実験では7~11歳の青年に対してはうつ病の改善が見られたというデータも出ており、一概に「ベンラファキシンを摂取すると自殺企図のリスクが上がる」とは言い切れないのが現状です。

SSRIの治療で症状が改善されなかったティーンエイジャーに対して、他のSSRIとベンラファキシンを服用させ比較した実験では、ベンラファキシン服用者の自殺率の方が上昇しました。とりわけ自殺を試みた経験のある10代だと、ベンラファキシン投与後、自殺企図率が他のSSRIに切り替えた対照群よりも6割多くなるとの報告があります。

躁転させてしまう可能性

ベンラファキシンは双極性障害の患者への投与は承認されていません。躁転させてしまうリスクがあるからです。また、双極性障害患者へのベンラファキシンの投与は、混合性エピソード(抑うつと躁が混ざった状態)を誘発しやすいという側面があり、自殺の危険性を高めることも懸念されています。

双極性障害患者でなくても、服用してイライラや不安、焦燥感といった精神的な変調が見受けられる場合は、主治医への相談が必要です。

排尿困難

体質によっては、ベンラファキシンを摂取すると尿の出が悪くなるケースがあります。とりわけ、高齢者や前立腺肥大症を発症している人はそのリスクが高め。服用後に全く尿が出なくなった場合には、すぐに専門の医療機関を受診してください。

また、強い動悸を感じたり、血圧の上昇が酷かったりするときも同様です。頻脈や血圧の上昇も、ベンラファキシン特有の症状になります。服用量が多い際はより注意して過ごしましょう。

ベンラファキシンの問題点

アメリカ人の10人に1人が抗うつ剤を服用

ベンラファキシンの服用者は世界で3000万人に及び、抗うつ剤が必要以上に広まっているとの指摘もされています。ベンラファキシンが使われる理由として、抗うつ剤を服用している人の7割近くがうつ病と診断されていないことが挙げらるでしょう。

抗うつ剤は一般内科でも処方されます。アメリカでは内科医やファミリードクターによって比較的簡単にに処方してもらえる薬です。
しかし、数種類の抗うつ剤を一緒に摂取すると自殺願望が強くなるケースがあり、実際に自殺未遂を繰り返した患者も確認されています。必要以上に抗うつ剤を摂取するのは当然危険な行為。しかし、その副作用が見過ごされているのが現状です。アメリカでは、ベンラファキシンの使用が広まりすぎてしまったことが社会問題として取り上げられています。

背景に潜む経済的理由

抗うつ剤の市場は、アメリカのみで約6000億円にものぼるとされています。製薬会社と病院・医師との関係は密接であるため、「抗うつ剤が安易に処方されてしまっているのではないか」という疑問の声も上がっているようです。

セロトニンに働きかけてうつ病を緩和する方法には自然療法という選択肢もあります。いたずらに薬剤に頼るのではなく、まずは副作用の伴わないやり方でセロトニンの働きを活性化させられないか、慎重に検討すべきです。

 

 


監修者

滝本 裕之

監修者 滝本 裕之

セロトニン活性療法協会 代表理事
ひろカイロ整体院 総院長

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