パロキセチン


抗うつ剤のジェネリック医薬品であるパロキセチン。パロキセチンは優れた効果を発揮する「パキシル」をより安価で提供し、患者さんの負担を軽減することを目的に開発されました。以下ではパロキセチンにつていて解説します。

 

 

パロキセチンとは?

抗うつ剤として有名パキシルのジェネリック医薬品として、2012年に開発されたパロキセチン。パロキセチンはパキシルと同様の成分で作られており、その効果や安全性は新薬として承認されていることからもうかがえます。ジェネリック医薬品は薬価が安く、患者の経済的な負担を軽くしてくれる薬剤です。
パロキセチンは精神科や心療内科だけなく、他科でも処方される薬ですが、うつ病や不安障害の改善を目的に出されるのが一般的。1日1回程度の服用で済むほど効力の強い薬として知られています。

パロキセチンの効果

パロキセチンの効果

パロキセチンは一般的にうつ病や不安障害に処方される薬。パロキセチンにはセロトニンを増やして落ち込みや不安を改善する作用があり、うつ病や不安障害を改善するのに効果的です。セロトニンへの働きはうつ病だけでなく、適応障害や自律神経失調症などに起因する「うつ状態」にも効果があるとされており、さまざまな疾患に処方されます。
しかし、同じ「うつ状態」を発症する双極性障害(躁うつ病)への使用はあまり良いとされていません。気持ちを上げすぎて躁状態を悪化させてしまうと考えられているからです。

また、パロキセチンは抗不安作用の面ではパニック障害や社交不安障害といった、不安が根底にある病気にも処方されます。強迫性障害といった難治性の障害にも使用されるケースも多く、SSRIの中では幅広い効果を発揮する抗うつ剤です。

パロキセチンの作用機序

セロトニンを増やす

うつ病や不安障害に効く薬として知られているパロキセチンは、「SSRI」と称される種類の抗うつ薬。SSRIとは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」という意味で、分泌されたセロトニンの再取り込みを防ぐことで脳内のセロトニン濃度を高める働きを持つ薬です。

神経に情報を伝える役割を担う神経伝達物質は、神経と神経の間に分泌されます。セロトニンも神経伝達物質の一つです。他の神経伝達物質と同様に神経の間に分泌され、情報を伝えています。神経伝達物質は、適切な量が分泌されないと、脳内で情報が正確に伝わらず、さまざまな不調が心身に現れてしまうのです。

セロトニンが伝達している情報は「感情」にもかかわっており、脳内においてセロトニンの分泌量が乱れると、うつ病や不安障害を発症すると考えられています。パロキセチンは、神経の間に分泌されたセロトニンが再取り込みされないように働き、脳内にセロトニンが長く留まるようにしてくれる薬。神経の間におけるセロトニンの濃度を上昇させ、スムーズに情報を伝達できるようにするのです。

ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する

SSRIには、パロキセチン以外にもデプロメールやジェイゾロフト、レクサプロなどがあります。それらにはセロトニンの再取り込みを阻害すること以外に、ノルアドレナリンやドーパミンなどを増やす効果も。ノルアドレナリンやドーパミンは気分に影響を及ぼす物質です。これらの気分に関する神経伝達物質は「モノアミン」と呼ばれるのが一般的。
それぞれ、セロトニンは主に落ち込みや不安に関係しており、ノルアドレナリンは意欲、ドーパミンは快楽に関係する神経伝達物質です。

パロキセチンの主な働きはセロトニンの増加ですが、他にもノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、意欲ややる気を高める効果があることも証明されています。

パロキセチンの副作用

アクチベーション・シンドローム

アクチベーション・シンドロームとは、抗うつ剤により意欲や気分が快方に向かうのではなく、違う方向に活性化してしまう状態のこと。イライラや焦燥感、不安、パニック、攻撃性、衝動性、不眠など、さまざまな不快な症状を伴うのが特徴です。
アクチベーション・シンドロームにおいては、ときに症状が改善したかのような感覚がもたらされることもあります。しかし、その後より強いうつ状態を引き起こすリスクがあるので注意が必要です。

消化器系の不調

パロキセチンを服用し始めた初期段階に良くみられる副作用として吐き気があります。次いで胃の不快感やお腹の張り、下痢や便秘などの症状も良くある副作用。中には仕事や家事をこなすのが困難になる場合もあるようです。
消化器に起きる症状は1週間から長くて2週間で収まるといわれていますが、苦しい状態が続くのであれば、主治医に相談しましょう。

体重の増加

体重の増加はパロキセチンだけでなく、SSRIに多く見られる副作用。パロキセチンを服用している患者の中にはうつ症状が改善されたものの、体重が増加してしまい、気分が落ち込んでしまう人も多くいるようです。とりわけ女性は体重を気にする傾向が強いため、気持ちがふさぎ込むリスクは高くなります。

落ち込みを改善させることを目的に投与しているのに、体重の増加で気分が落込んでしまっては本末転倒。太ることへの不安や抵抗が強い患者には、医師がパロキセチンの投与がためらうケースもあるようです。

新生児の心血管系異常

妊娠している方や授乳婦の方はパロキセチンの投与に注意が必要です。「SSRIは慎重に投与すべき」と位置づけられていますが、パロキセチンはその中でも危険度が高く設定されています。「絶対だめというわけではないが、極力使わないで欲しい」という内容がパキシルの製造元が発行している添付文書にも記載。特に注意すべき期間は妊娠初期の胎児の器官が形成される時期だとされています。

この添付文書には海外の免疫学調査において、「妊娠初期にパロキセチンを投与された妊婦が出産した新生児に、先天異常(特に心血液系異常)のリスクが増加した」との記載もありました。

パロキセチンと新生児の心血官異常の因果関係は議論中で、まだ確定はしていません。しかし、この警告文からしても、妊娠初期のパロキセチンの服用は極めて慎重に行うべきだと言えます。

パロキセチンの問題点

アメリカでは抗うつ剤は神経系だけでなく、一般内科でも処方されています。患者が不眠や不安を訴える場合に処方されており、日本人より手軽に手に入れられるのです。

アメリカ人は神経科を受診することに抵抗が少ない人が多く、日本人に比べるとためらいなく抗うつ剤を手にしています。入手が容易なことからパロキセチンは急速に普及し、楽天的な気分になりたいといいう理由で健康な人まで手を出すようになりました。それによりうつ患者は1999年に44万人だったのに対し、2005年には92万人まで増加しています。

しかし、服用者の多くが副作用について理解しておらず、SSRI患者が薬の副作用が原因とみられる銃乱射事件も発生。以降、一部の患者には深刻な副作用が出ていることが明らかにされ、パロキセチンを含むSSRIの安易な服用は社会問題として取り上げられるようになっています。

医師の処方に従って服用する分には問題ありませんが、「セロトニンを活性化して気分を上向きにしたい」と思っている方にとっては、パロキセチンはあまりにリスキー。まずは日常生活に取り入れられる方法で、セロトニンの活性化を目指すべきです。

 

 


監修者

滝本 裕之

監修者 滝本 裕之

セロトニン活性療法協会 代表理事
ひろカイロ整体院 総院長

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