5.睡眠とセロトニン


セロトニンを増やすには、睡眠も非常に重要なポイントです。一般的には7〜8時間睡眠が理想ではあるものの、難しいという方もいるはず。そんな時には午後2時から4時の間に15分程度の仮眠を取ることがおすすめ。
ただし「ただ寝れば良い」というわけではなく、睡眠の質を上げることも大切です。例えば夜は暗めの照明にして朝は太陽の光をたっぷり浴びる、寝る前にスマートフォンやパソコンを触らないといったように、少しの心がけで良い睡眠を取ることができるでしょう。
このように、このページではセロトニンを増やすための睡眠のポイントをまとめています。セロトニンと睡眠に関する研究に関しても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

どれくらい寝ると良い?

一般的に睡眠時間は、7~8時間程度が最適と言われています。朝6時に起きるなら、遅くとも夜の11時には寝る計算です。しかし、毎日7~8時間寝るのが難しい方も多いでしょう。そんな時は、午後2~4時頃に15分程度仮眠をとることをおすすめします。仮眠も難しい場合は、少しの時間目を閉じて身体を休めましょう。

快眠するには

ぐっすり快眠するための工夫や生活スタイルをご紹介します。

夜の暗め照明と朝の光

明るすぎる照明は、快眠に欠かせないメラトニンの分泌を抑えてしまいます。夜になったら白熱灯のようなオレンジ色の照明にしたり、電気を付ける場所を少なくしたりして、室内が少し暗めになるよう調整しましょう。

反対に、朝は明るい太陽の光をたっぷり浴びてください。日光に当たることで体内時計がリセットされ、一日の生活リズムが整います。

寝る前にパソコン・スマホを使わない

スマホを使わない日はないという現代。「眠れないから、寝落ちするまでスマホを眺めている」という方も多いのではないでしょうか。
寝る前にベッドの中でスマホを見たり、寝る直前までパソコンの画面を見たりする習慣は、快適な睡眠を妨げる原因となります。
明るすぎる照明と同じで、スマホやPCから出る「ブルーライト」には注意が必要です。
ブルーライトが目の網膜に入ると、脳が「朝がきた」と判断してしまい、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑えてしまうのです。
寝る2時間前にはスマホやPCを使うのをやめて、脳を休めてあげましょう。自然とセロトニンが活性化されてメラトニンもつくられるようになり、しっかりと眠れるようになります。

起きた直後のブルーライトにも注意

起床直後の習慣にも注意が必要です。朝起きてからカーテンも開けず、日光を見る前に真っ先にスマホの画面を見ているようでは、せっかく夜の習慣を改善したところであまり効果がありません。
朝起きたらまずはカーテンを開けて、日の光を浴びましょう。スマホはそのあとにチェックしてください。悪い習慣を断つためにスマホのアラームに頼らず、置型の目覚まし時計に切り替えてみるのもひとつの手です。

毎日何気なく続けている生活スタイルを見直すだけでも、ブルーライトの影響を和らげることができます。寝る前のスマホをやめる、朝起きたらカーテンを開ける、リズム運動を取り入れてみる。この3つの習慣を身につけてセロトニンを活性化し、自然と快眠できる体づくりを行いましょう。

お風呂

体温が高いと眠りにくくなってしまいます。そのため、湯船の温度は38~39度程度のぬるめに設定し、寝る前の1~2時間前に入浴しましょう。熱いお湯で疲れをとりたいという方は、もう少し早めの2~3時間前に入浴するのがおすすめです。

食事とアルコール

食材

まず、食事は朝・昼・夜食材のバランス良く食べることが大切です。しかし、毎日一汁三菜のようなメニューを考えるのは大変ですよね。そんな時は、トリプトファンという、セロトニンを増やす成分を含む食材がおすすめです。トリプトファンが含まれているのは、乳製品・大豆製品・バナナ・肉・魚・卵など。特にバナナはトリプトファンを摂取しやすい食べ物なので、朝食やおやつに用意しておくといいでしょう。

時間

食事は寝る3時間前にはすませるようにしましょう。寝る直前に食べると胃の働きが活発になり、なかなか寝つけなくなってしまいます。どうしても夕食が遅くなってしまう時は、脂っぽいものやこってりしたものを避け、胃に優しい食事をとりましょう。

アルコール

「お酒を飲むと眠れる」という方もいるかもしれません。確かにお酒を飲むと眠りやすくはなりますが、アルコールには睡眠の質を下げる作用があります。また、利尿効果によって夜中に起きてしまうこともあるため、できるだけお酒は控えるようにしましょう。

睡眠ホルモンのメラトニンとは

脳内の松果体で生合成されるホルモンで、セロトニンを原料にして作られるのがメラトニンです。生体のリズム調節に重要な役割を果たしています。
メラトニンは夜中に分泌量が増えるのが特徴。そのため、原料となるセロトニンを日中にしっかりと分泌する環境を整える必要があります。
その他、「活性酸素」という悪玉物質を夜の間に除去する役割を持っており、活性酸素の除去は老化防止や成人病予防にも寄与します。

セロトニンと睡眠に関する研究

これまで、睡眠によって脳は休息し、寝ている間は脳の機能全体が低下すると考えられてきました。
しかし、最近の研究で、睡眠は脳幹下部の神経細胞によっておこる神経活動であると分かってきています。その神経活動が睡眠リズムをコントロールしていて、それにはセロトニンが深く関わっていると考えられています。

セロトニンが不足すると睡眠のリズムが崩れる

ラットを用いた実験で、脳内のセロトニンを除去する物質をラットに投与したところ、睡眠・覚醒のサーカディアンリズム(概日リズム)が崩れてしまいました。
このとき、これまでサーカディアンリズムを司るとされてきた脳の「視交叉上核」という部分からの信号は正常に機能していました。しかし、「前脳基底部・視索前野」というところの神経活動でサーカディアンリズムが消失していたのです。
このことから、視交叉上核のサーカディアンリズムはセロトニンの作用によって前脳基底部・視索前野に伝えられ、睡眠や覚醒のリズムを生み出すことが解明されました。
セロトニンが不足することによって体内時計(サーカディアンリズム)が崩れ、睡眠に影響を及ぼす、と結論づけられています。

参照元:独立行政法人理化学研究所・研究成果プレスリリース「睡眠・覚醒機能と24時間リズムをセロトニンが束ねる」(https://www.riken.jp/press/2012/20121017/

脳内セロトニンを制御する外側手綱核

ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質の多い脳内領域とつながっている「外側手綱核」という部分がセロトニンの活動を制御し、深い眠り「レム睡眠」のリズムをつくっていることが発見されています。
外側手綱核は、生物が不快な思いや悪い状況が起きた時などに活性化することが明らかになっており、実際にうつ病の人の外側手綱核では、血流量の異常な増加が報告されています。
そして、外側手綱核が異常に活性化するとセロトニン分泌を抑えてしまうことが分かりました。

参照元:独立行政法人理化学研究所・研究成果プレスリリース「うつ病関連物質セロトニンを制御する外側手綱核は睡眠調節も担う」(https://www.riken.jp/press/2013/20130515_1/

ストレスから遠ざかることは良質な睡眠への一歩

このような研究から、ストレスなどの「悪い状況」が続いて外側手綱核の異常活性が起きるとセロトニンが分泌されなくなり、体内のサーカディアンリズムに影響する、という一連の流れが不眠を引き起こす可能性が出てきました。
今後、外側手綱核の過剰な活性化が「レム睡眠」「ノンレム睡眠」に与える影響を調べることによって、うつ病による不眠や過眠などの睡眠障害の解明がすすむと期待されています。

外側手綱核を暴走させてセロトニン分泌を抑えてしまわないために、日ごろから不快な思いや不満を溜めないようにしておく。
無理や我慢をしすぎず、いやだと感じたら勇気をもってそれをやめてみる、手放してみるなど、ストレスから自分を遠ざけることも良い睡眠への第一歩と言えるかもしれません。

 

 


監修者

滝本 裕之

監修者 滝本 裕之

セロトニン活性療法協会 代表理事
ひろカイロ整体院 総院長

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