うつ病


私たちの脳内にある神経伝達物質「セロトニン」が不足すると、さまざまな影響が起きると考えられています。その中には、感情のコントロールが難しくなる、意欲が低下する、イライラ、不眠を引き起こすことで、我慢し続けてうつ病に進行してしまうケースも。
そこでこの記事では、うつ病を発症している方のセロトニン量やうつ病の原因、うつ病になりやすいと考えられている人の特徴を紹介。そして、うつ病ではどのような治療法が行われるのか、といったことについてまとめました。誰もが発症する可能性のあるうつ病について詳しく紹介していますので、現在ストレスやあまりよく寝られないといった症状を感じている人も、特に問題はないと考えている人も、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

 

うつ病の発症はセロトニンと深く関係している

セロトニンは脳内にある神経伝達物質で、感情のコントロールや精神の安定などに深くかかわっています。ストレスの蓄積によりセロトニンの分泌が減っていき、その結果、脳の機能不全が起こります。
意欲の低下やイライラや悲しみ、不眠といった症状が現われて、うつ病を発症するメカニズムです。

うつ病を発症している方のセロトニン量のデータ

脳内のセロトニンの量を示すグラフ

タンパク質と脳の栄養~うつ病とタンパク摂取~(https://www.alic.go.jp/content/000141085.pdf)

うつ病の患者さんは、セロトニンなどの神経伝達物質の量が少なくなっているのが、発表データに現われています(画像参照)。

9例中7例が血漿中のセロトニン量が測定不能で、男性はすべて測定不能、女性の2例のみが測定可能だったとのこと。とはいえ、その濃度は健常な中高年男性・若年女性のセロトニン濃度に比べても低く、測定可能だった20代女性のセロトニン値でさえ、低いものになっているそうです。

うつ病の原因とは

うつ病を引き起こすと考えられている原因をまとめました。

ストレス

人間関係・仕事・学校・家事・育児など、私たちの生活はさまざまなストレスにさらされています。強いストレスに晒され続けると、脳にあるセロトニンなどの神経伝達物質のバランスが崩れうつ病になる可能性があります。

また、ストレスはネガティブなものばかりではありません。嬉しいことや楽しいことでも、その感情が強すぎたり環境に適応できなかったりして、うつ病の引き金となることもあります。例えば、志望校への入学や子どもの結婚は嬉しいことですが、その後の生活の変化がストレスになってしまうこともあるのです。

過労

「過労死」がたびたびニュースなどで問題になりますが、働きすぎで心と体に負担がかかると、うつ病を引き起こすことがあります。

【体の病気】
心筋梗塞・脳卒中・糖尿病などの患者さんは、うつ病にもなりやすいと言われています。これは薬や病気そのものが脳に影響を及ぼすことや、病気が心理的ストレスになることが原因と考えられています。

うつ病になりやすい人は

うつ病になりやすいと言われているタイプをご紹介します。

真面目で責任感が強い

真面目で責任感が強い人は、周囲より頑張りすぎてしまう傾向が強いため、ストレスが強くうつ病になりやすいと考えられています。
つまり、真面目で責任感が強い性格そのものがうつ病になりやすいわけではなく、頑張りすぎた結果ストレスが蓄積してしまうことが原因です。物事に優先順位をつけたり、辛い時は周囲に助けを求めたりするなど、柔軟に対処することが大切です。

女性と高齢者

男性より女性の方がうつ病になりやすい傾向があります。妊娠・出産・月経などの体の変化のほか、結婚・育児など環境の変化も多いことが原因と考えられます。ただし、女性の方が病院を受診する人が多いので、実際には男性のうつ病患者はもっと多いのではないかと言われています。
高齢者にうつ病が多いのは、年を重ねるごとに死別や病気などのストレスが増えるのが理由のひとつです。

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季節性うつとは

季節の移り変わりに気分の落ち込みが見られ、しばらくすると自然に回復していくうつ症状のことを指します。冬に発症するケースが多いことから「冬季うつ」「ウィンター・ブルー」などとも呼ばれています。
ただし、季節性うつは冬以外の季節でも起こり得る障害です。
仕事や学校などで生活に変化が起こりやすい春、湿度が高まり不快感が増す梅雨どきなど、環境の変化で心身に負担がかかり、そのストレスが引き金となって発症しやすくなります。
季節性うつは一度発症してしまうと毎年同じシーズンに繰り返すことが多いため、原因と特徴を知って対処することが大切です。

季節性うつの特徴

季節性ではない一般的なうつ病と同様、気分の落ち込みや気力がなくなる、物事を楽しめなくなる、イライラするなどの症状があらわれます。また、チョコレートや甘いパン、お菓子などの食品が食べたくてたまらなくなり、過食に走ってしまう人も。動くのが億劫になり運動量も低下するため、太りやすくなります。
「冬の朝は寒いから起きるのがつらい」「春先はあたたかいから眠い」のは誰にでも当てはまることではありますが、日常生活が困難になるほどという場合、季節性うつからくる症状かもしれません。
とくに冬季うつでは朝起きるのがつらくなり、日中に眠気を感じる症状も多く見られます。
「自分がだらしないからだ」と決めつけず、急に普段どおりの生活が送れなくなった、つらくなった場合には、無理をし過ぎず医師に相談してみましょう。

季節性うつの原因

季節性うつの主な原因のひとつに、日照不足があります。冬場は春夏よりも日照時間が短い、梅雨時期は天候のすぐれない日が多いなど、日光にあたる時間が少なくなりがちです。
そのため、日光浴によって脳内で分泌されていたセロトニンがうまくつくられなくなってしまいます。
セロトニンがつくられなくなると、睡眠のために必要な「メラトニン」がつくられなくなる原因にも。それが不眠につながり、さらなるセロトニン不足を招いてしまいます。
セロトニンはやる気や多幸感に関わり、心身のバランスを整えるために重要です。
セロトニンが不足しない生活習慣を心がけ、季節性うつに負けない体をつくりましょう。

季節性うつにならないために

季節性うつは、症状の重さによっては抗うつ剤の使用が必要なケースもありますが、毎日の生活で以下のことを注意しておくと、症状の改善や軽減につながります。

  • できるだけ日光に当たる(午前中~14時くらいまで)
  • 適度なリズム運動をする(ウォーキング・咀嚼など)
  • グルーミング(マッサージ・セロトニン活性療法など)
  • 栄養バランスのとれた食事をする(トリプトファン・ビタミンB6・炭水化物)
  • 規則正しい睡眠スケジュールをつくる

食事面では、セロトニンの材料となるアミノ酸「トリプトファン」が多く含まれる食品を意識的に摂取するのがおすすめです。

日光に当たる時間がない、天気の悪い日が続いて十分な日光浴ができない、といった場合には、自宅や職場の照明をなるべく明るくすることでも効果があります。

仮面うつとは

うつ病の初期の症状で、精神的な不調よりも身体的な不調が強く出ている状態のことです。心の不調になかなか気づきにくく、元気な仮面をつけているような状態のためこのように呼ばれます。

やる気がない、食欲がない、楽しめないという症状はあまりなく、体のだるさや頭痛、肩こりが続くなど、一見すると「疲れているだけ」のように見えます。
また、体の不調からいろいろな科を受診しても、検査ではとくに異常が見られません。うつ病という自覚が乏しいために無理に活動を続けてしまい、知らないうちに病状が悪化してしまうこともあります。

仮面うつになりやすい人

自分にきびしい

完璧主義でがまん強い性格の人は、自分に対してきびしく、ストレスを溜めやすい傾向にあります。
また、体の不調を感じても「このくらいは大丈夫だろう」「ちょっと疲れているだけだ」と無理をし過ぎてしまうため、知らないうちに大きなストレスを抱えてしまうのです。
調子が悪いことを「自己管理不足」や「やる気が下がっている」と自分のせいに感じてしまい、さらに追い込んでしまいます。がまん強さや責任感の強さは長所とも呼べますが、症状を悪化させる原因になるため注意が必要です。

心配性・周りを気にする

常に周りの人とペースを合わせなければと考えている人も要注意。周囲を気にして無理に合わせることを優先してしまい、精神的に大きなストレスとなってしまいます。
体の不調を心配してさまざまな科を受診するも、原因が分からないとなるとさらに不安になり、結果として大きなストレスとなってしまうおそれもあります。

自己判断せずまずは相談を

一般的に、うつ病は「精神の病気」とされていることから、身体的な症状を見過ごしてしまいがちになります。精神的な症状がなく身体的な不調だけがあらわれていると、精神科や心療内科を受診しようと思う人はあまりいないでしょう。

ですが、「うつは身体的な症状も起こり得る」ことを知っておいてください。
内科など、思い当たる病気の検査をしてみても原因が分からない場合には、「疲れがたまっている」「忙しいから」と自己判断せず、心の不調からきている可能性も考えて、一度は心の専門家にも相談しましょう。
うつの初期である「仮面うつ」だった場合、正しい治療を早い段階で受けられ、改善する見込みも高まります。

うつ病の治療法は

うつ病にかかってしまったら、どのような治療が行われるのでしょうか。一般的には「休養」と「投薬治療」を中心に、「精神療法」を組み合わせた治療が行われます。

十分な休養

うつ病治療で最も大切なのが「休養」です。うつ病にかかる人には真面目な性格の人が多いと言われており、「休むとかえって落ち着かない」「休むことに罪悪感を感じる」という人も多く見られます。
うつ病だと診断されたら、まずは心と体をゆっくり休ませることが大切です。家で休養できない状態なら、軽症でも入院となる場合もあります。

くすりによる治療

うつ病も体の病気と同じように、適切に薬を使うことで改善が見込めます。薬に抵抗がある人もいるかもしれませんが、医師から処方された薬を正しく服用しましょう。薬には西洋薬のほか、漢方薬が用いられることもあります。

精神療法(心理的治療)

うつ病の再発を予防するために、患者さんの認知・思考をより柔軟にしていく「精神療法」がとられることがあります。

セロトニンを活性化する

うつ病の発症には、セロトニン不足が原因のひとつと考えられています。セロトニンの値は、食事・運動・日光に当たることなどで改善できるとされています。
食事は、セロトニンをつくる原料となるトリプトファンが含まれた食べ物の摂取が重要。肉、大豆、乳製品、バナナなどを取り入れることが大切です。

運動において大事なのは、ウォーキング、呼吸をしっかり行うこと。朝のウォーキングやラジオ体操はオススメです。

そしていま注目を集めているのが、セロトニン活性療法です。 『脳からストレスを消す整体』セロトニン活性療法は研究を重ね、臨床試験を実地して論文が医学誌に数度、登録されている科学的根拠がある手技(整体)です。

うつ病への自分でできるケア

うつ病を発症した場合には、まず自身がストレスと感じることはやめるということが大切です。そのためには、ゆっくりと休養を取ることが必要となってきます。まずはしっかりと休み、生活のリズムを徐々に取り戻していくことが大切です。
セルフケアのポイントとしては、例えば外に出られるようであれば自然と触れ合ったり、のんびりウォーキングすることも良いでしょう。また、しっかりと睡眠をとり、できるだけバランスの良い食事を摂るようにすることも大切です。また、ストレスを解消しようとお酒に頼ることは控えましょう。

うつ病への周りの人が出来るサポート

うつ病を発症した場合には、家族や周りのサポートが非常に大切になってきます。どのようなサポートが考えられるのかを見ていくことにしましょう。

うつ病を理解する

まずはうつ病とはどのような病気かを理解することが大切です。さまざまな本を読んだり、患者自身が病院に行く際に付き添うことで徐々に病気への理解を深めていきましょう。その上で、あまり力を入れすぎず、自然に接することが大切です。

患者の話に耳を傾ける

患者の話にゆっくりと耳を傾けることも大切です。ただし、本人があまり話したがらない時には無理に話をさせる必要はありません。本人が話したくなったら話を聞こう、というスタンスでいると良いでしょう。また、本人に「話したくなったら話を聞くよ」ということをあらかじめ伝えておくのもおすすめです。
話を聞く時には患者の話を遮らず、まずは話したいことを聞きます。その上で大切なのが共感をするということ。また、無理に励ますと患者の負担となってしまうこともあります。

相談をする

本人が医療機関や会社の相談窓口などに相談ができそうであれば、相談するように促してみると良いでしょう。ただ、本人は相談しにくい、病院には行きたくないと感じている場合もあるかもしれません。そのような場合には、まずは家族が相談をしてみる、という手も。その上で、本人への対応を相談してみると参考になるはずです。

療養を支える

うつ病を発症した場合には「しっかりと休息をとる」ことが大切であるため、安心して休息できる環境づくりを行いましょう。
また、病院への受診に付き添うこともおすすめです。無理に毎回付き添う必要はありませんが、一緒に医師の話を聞くことで、病気や本人の状態についてより理解が深まるでしょう。
また、本人の元気がない場合には気分転換のために外に連れ出そうと考える方もいるかもしれません。しかし、患者本人には外に出ることが逆効果になる場合もあります。そのため、無理強いはせずに本人が楽しめそうだと思えるまで待つこともポイントです。

 

 


監修者

滝本 裕之

監修者 滝本 裕之

セロトニン活性療法協会 代表理事
ひろカイロ整体院 総院長

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