「やらなきゃいけない仕事や課題があるのに、やる気が出ない」「実際に行動を起こせない」という方は、ドーパミンの分泌に問題があるかもしれません。ここでは、やる気や行動力に深く関わるドーパミンとセロトニンとの関係性を解説しています。
ドーパミンが不足するとさまざまな不調をもたらしますが、ドーパミンは過剰に分泌し過ぎても問題を起こしてしまうようです。
ドーパミンが過剰になるとどうなるか、適度に分泌するにはどうすれば良いかについて掘り下げました。
目次
ドーパミンが豊富に分泌されていると、やる気やモチベーションがアップすることから「やる気のホルモン」とも呼ばれています。
ドーパミンが分泌されることにより、ポジティブな気持ちになると言われています。楽しい、嬉しいという気持ちが継続することで幸せな気持ちになり、さらなる意欲につながるでしょう。
また、「気持ち良い」「これから先、良いことがあるかも」と感じた時にもドーパミンが分泌されることがわかっています。何事にもやる気が起きない「うつ」の症状を改善するのも、ドーパミン分泌のコントロールが利用されることがあります。
ドーパミンが不足するとやる気が起きなくなるため、豊富に分泌させたいと考えるところですが、たくさん出れば出るほど幸福感を得られるわけではありません。
ドーパミンは、不足しても過剰になっても問題を起こしてしまうのです。
ドーパミンは「報酬脳」「快楽脳」とも言われており、繰り返し過剰に分泌され続けると、アルコールや薬物、ギャンブル、買い物などの依存症を誘発するおそれがあります。
また、統合失調症という精神障害にもドーパミンの過剰分泌が関わっていることが分かってきました。ドーパミンが過剰に分泌されることで、幻覚や妄想などを引き起こすとされています。
神経細胞から放出されたドーパミンを細胞内に取り込み、ドーパミンの分泌量を調節する役割を果たす「ドーパミントランスポーター」が脳内でどのように変化しているかを調べた研究によると、統合失調症の人は、健康な人に比べて「視床」でドーパミントランスポーターの量が多く、症状が重い人ほど増加傾向にあることが分かりました。
このことから、脳の情報を統合する役割を持つ視床でのドーパミンの過剰な活動が情報の統合に乱れを生じさせ、幻覚や妄想、自閉、認知機能障害などを引き起こしているのでは、とされています。
統合失調症を発症するはっきりとした原因は未だ解明されていませんが、脳内の視床でのドーパミン過剰が原因というのが最も有力な説です。
60歳以上の高齢者に多いとされているパーキンソン病。意欲がなくなり、次第に喜怒哀楽などの感情失われていくという特徴があります。
このパーキンソン病も、ドーパミン神経細胞が失われることによって発症することが分かってきました。ドーパミンが担っていた運動や意思の伝達機能がドーパミン不足によってうまく働かなくなり、運動や感情表現が失われていきます。
ドーパミンが不足すると、物事の関心が薄れ、運動や学習の意欲が低下する可能性があります。
一方で、過剰に分泌されてしまっても過食や買い物依存、アルコール依存などを引き起こしてしまうおそれも。
セロトニンは、ドーパミン分泌量のバランスを整える働きを持っています。セロトニンが多すぎず少なすぎず、規定量体内にあることでドーパミンの分泌が安定し、心の安定につながります。
三大神経伝達物質であるセロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミン。この3つのバランスが保たれていることが理想的です。
人間はストレスを感じると、ノルアドレナリンが自律神経に働きかけて活動しやすい状態をつくります。
一方で、ドーパミンはそのストレスや辛い状況を乗り越えたとき、達成感や快楽を感じた時につくられるものです。
この2つが不足していると、いつまでも無気力でやる気の起きない状態になってしまいます。
ノルアドレナリン・ドーパミンをうまく働かせるためにも、セロトニンの存在は大切なのです。
セロトニンは、ドーパミンをコントロールして気持ちを安定させる役割を担っています。ドーパミンを司るセロトニンが多すぎず少なすぎず、規定量あることが、感情や心のバランスにとって大切です。
そこで、ドーパミンとセロトニン、どちらも増やす方法があるかを調査しました。
セロトニンを増やすには、リズム運動が効果的といわれています。ドーパミンを増やすにも有酸素運動が良いとされているので、どちらの分泌も高めたい方は継続的な運動がおすすめです。ウォーキングなら一定のリズム運動かつ有酸素運動なので、効率的にドーパミンとセロトニンの分泌を高められるでしょう。
好きな音楽を聞くことでドーパミンが分泌されると言われていますが、セロトニンを活性化させたいなら集中したウォーキングが大切。目や耳から入る情報を極力減らすことで効果につながるため、人が少ない朝の公園や川沿いを、イヤホンなどで音楽を聞かず静かに歩くほうがおすすめです。
瞑想に伴う腹式呼吸のリズム運動によってセロトニン神経が活性化すると言われています。。セロトニンが活性化することでドーパミンも調整され活性化するのです。
瞑想を行う際にはゆったりとした服装で、集中できる静かな環境がおすすめです。瞑想をする時間がないという方は、呼吸法を変えるだけでも瞑想と同じような効果を得られます。4秒かけて息を吸い込み、7秒息をとめてから8秒息を吐き出すという「4-7-8呼吸法」を実践してみてください。
ドーパミンを増やしたいなら、たんぱく質からとれる「チロシン」というアミノ酸を多く含んだ食品を選びましょう。
チロシンはチーズなどの乳製品や大豆、納豆に含まれていて、これらの食品にはセロトニンを活性化させるトリプトファンも多く含まれています。豆腐や納豆、チーズを意識的に摂ることで、ドーパミンとセロトニンのどちらも効率的に増やせるでしょう。
ポジティブな気持ちになってやる気があふれるドーパミン。適度に分泌させてうまく付き合うなら、セロトニンを活性化させておくことが大切です。ドーパミンが不足したり過剰になったりしてしまわないためにも、まずはセロトニンに意識を向けてみてはいかがでしょうか。